【第10回公募以降】事業再構築補助金の事前着手申請を徹底解説

コラム

事業再構築補助金は、企業の新たな事業展開や設備投資などを助けるための取り組みであり、事前着手制度はその補助事業期間に関係する特例処置的な位置付けです。事前着手申請の利用により、事業再構築補助金の採択や交付決定前に行った事業の経費を補助対象経費として計上できます。本記事では、その事前着手制度について、内容から具体的な申請の詳細まで解説します。

本記事は、事業再構築補助金の公式サイトが公開している、事業再構築補助金 【サプライチェーン強靱化枠を除く】 公募要領 (第10回)を元に作成しています。重ねてご確認ください。

事業再構築補助金の事前着手申請とは?

事前着手申請は、事業再構築補助金の採択前や交付決定前に発生した経費を補助対象とするための特例制度です。これにより、補助金の採択や交付決定前でも、事業にかかった経費が補助対象として認められます。この特例は、緊急性が求められる事業者の支援のために設けられており、補助金の交付決定がされる前であればいつでも事前着手申請を行うことが可能です。

具体的には、補助事業を採択される前に始めたいと考えている事業者向けの仕組みとなっています。公募開始日から補助金の交付決定日までの期間中に事前着手申請の手続きを行う必要があります。その結果、補助金交付決定前に、補助対象事業を開始することが可能となります。

ただし、事前着手申請が承認された場合であっても、必ずしも事業再構築補助金に採択されるわけではありません。そして、申請した経費が全て補助対象経費と認定されるとは限らない点にも留意する必要があります。

このように、事業再構築補助金の事前着手申請は、事業の早期開始を目指す事業者にとって有益な制度です。しかしながら、その利用には一定の注意が必要であり、メリットとデメリットやリスクを十分に理解した上で進めていくことが求められます。

第10回公募以降の事前着手申請制度の変更点

第10回公募から事業再構築補助金の事前着手申請に関する制度に重要な変更が加えられました。事前着手申請が可能な応募枠が制限され、特定の応募枠のみが事前着手申請を利用できるようになりました。また、事前着手申請の対象となる経費も、令和4年12月2日以降に行なった取引に限定されています。

以下が第10回公募以降の事前着手申請の前提条件になります。

  • 事前着手申請が可能な応募枠
    • 事前着手申請が利用できるのは「最低賃金枠」と「物価高騰対策・回復再生応援枠」のみとなりました。それ以外の枠に申請する事業者は、事前着手申請の利用ができません。
  • 事前着手理由の説明
    • 事前着手申請を行う際には、その理由を事務局へ示す必要があります。具体的には、コロナや物価高騰の影響による既存事業の売上への影響や、早期に着手できない場合の損失などを明示する必要があります。
  • 事前着手申請の対象となる経費
    • 事前着手申請が対象とする経費は、令和4年12月2日以降に行なった購入契約等に限定されています。この期間前に行なった取引は事前着手申請の対象とはならないため、その点を注意が必要です。
  • 再度の事前着手申請
    • 第10回以降の公募の開始日以前に事前着手届出が受理されている場合、再度事前着手申請をすることで、補助事業の事前着手が認められます。

以上のように、第10回公募以降では事前着手申請の制度に重要な変更があり、その理解と正しい対応が求められます。

事前着手申請を行うプロセス

事前着手申請に応募するには、事業再構築補助金自体の申請とは別に、事前着手の為の届出を事務局にオンライン上で提出する必要があります。以下が、その申請手続きと認定取得等のプロセスの概要です。

申請手続き:Jグランツを利用

  1. 申請の際には(事業再構築補助金の公募申請と同様の)GビズIDを取得する必要があります。これはJグランツへのログインに使われます。なお、GビズIDの取得は郵送による手続きが必要となり、これには最大で1か月程度の時間が必要です。早めの取得を推奨します。
  2. 申請は全てJグランツを通じて行います。このシステムには事前着手申請を行うための必要な情報入力欄が用意されています。入力欄の書き方は指示に合わせて埋めていけば簡単にできます。記載内容の具体的な解説は次章で解説します。
  3. 事前着手申請では見積書などの提出は不要ですが、事業再構築補助金の交付申請や実績報告の際には、通常の補助対象経費と同様に、見積書、発注書、請求書等の書類が必要となります。事前にそれら提出書類の記入例や書き方を確認し、発注先の事業者に事前に話を通しておくことを推奨します。
  4. 必要事項を記入後、「申請する」をクリックして完了です。

事前着手申請の結果通知とその後

  1. 事前着手申請の結果は、申請からおおよそ10日から2週間程度で通知されます。
  2. 通知はJグランツのマイページ内に表示され、申請者のメールアドレスにも送信されます。確認を怠らないようにしましょう。
  3. 申請内容に不備があると事務局から差戻しがある場合があります。その際は、事務局からのコメントを確認し、修正後に再申請することが必要となります。再申請の際には必ず「作成済みの申請」から処理してください。(新規で申請を行わないように注意が必要です。)
  4. 事前着手申請が承認された場合でも、補助金自体の採択が決定されるor有利に働くといったことはありません。補助金の申請も抜かりなく行いましょう。
  5. 事前着手申請の承認通知は、交付申請時に別途添付する必要があります。

以上が事前着手申請に関するプロセスの概要になります。事務局のリードタイムを考慮しながら手続きを早め早めに行いましょう。

事前着手申請書の作成:要点とサンプル

事前着手申請の申請書の項目

以下の写真が実際の申請画面です。

以下の内容を主に記入する必要があります。

  • コロナの影響を受けている事業の概要
  • 事業計画の概要
  • コロナの影響の長期化による事業活動への影響
  • 事業開始が遅れた場合に生じ得る影響

では、それぞれの項目に対して具体的にどのような内容を記入すれば良いのでしょうか。実際に申請が認定された業者の事例を添えて解説します。

事業再構築補助金の事前着手申請の各項目の書き方

記入内容ポイント記入事例
新型コロナウイルスの影響を受けている事業の概要(300字以内)新規事業ではなく、現行の事業の概要を記述します。具体的な新型コロナウイルスや物価上昇の影響は後述するので、ここで記載する必要はありません。弊社は ⚪︎⚪︎年に⚪︎⚪︎に創業致しました。「企業はお客様と共に成長する」という経営理念の下、事業活動を行っています。主な事業は美容業で、0歳から103歳といった幅広い年代層にご利用いただいています。年間約⚪︎⚪︎人の案件を獲得しており、年間約⚪︎⚪︎万円の売上高がございます。従業員は、20⚪︎⚪︎年⚪︎⚪︎月時点で、⚪︎⚪︎名を雇用しています。
事業計画の概要(300字以内)申請にあたり、具体的な記述(投資額など)が必要であるため、事前着手申請の段階で申請する事業の計画が固まっている必要があります。まだ事業計画が詰めきれていない場合は、そちらを優先しましょう。今回新たにフランチャイズ契約によるパン製造販売事業に取り組みます。具体的には、「地方再生、地方雇用、地方活性化」というコンセプトの下、⚪︎⚪︎において近隣住民、観光客、美容室利用客をターゲットに、①with コロナで好調であるテイクアウト業態、②既存事業の美容院でのサービスや学校給食への提供、幼稚園でのパン作り教室展開など、地域に密着したパン屋の展開、③他店舗の経営ノウハウを活用可能なフランチャイズ加盟方式、という特徴を持ったパン製造販売事業を行います。本事業への予定投資総額は⚪︎⚪︎万円で、20⚪︎⚪︎年⚪︎⚪︎月に開業いたしました。
新型コロナウイルスの影響の長期化による事業活動への影響(300字以内)事前着手申請は、緊急性が高く早期事業開始が求められる案件に対する補助なので、現行事業に対する新型コロナウイルスや物価上昇の影響を詳細かつ具体的に述べる必要があります。売上高の減少など具体的な数値の記載を心がけましょう。新型コロナウイルスの影響により弊社の既存事業は①マンツーマンでの接客へと移行したため、受け入れ可能顧客数が大幅に減少、②顧客や弊社スタッフのコロナ感染により、予約のキャンセルが頻発する、③成人式や夏祭りといったイベントの自粛・中止が相次ぎ、ヘアセット需要が低下するという3 点の影響を受けています。その結果、弊社既存事業における月次売上高は、コロナ前は約⚪︎⚪︎万円でしたが、コロナ以降その値は減少し、月次売上高は約⚪︎⚪︎万円と、⚪︎⚪︎%も減少しています。
事業開始が遅れた場合に生じ得る影響(300字以内)何故事前着手申請が必要なのか、その理由を明確に示すことが必須です。具体的には、事前着手申請をせずに交付決定後に事業を開始した場合に、どれだけの機会損失・想定売り上げの減少があるかを記載するべきでしょう。上記の通り、弊社は現在新型コロナウイルスの影響で大きく打撃を受けており、早急な事業立て直しが必要な状況です。この状況下で事業開始が遅れた場合、①売上の減少と②コストの増加の大きく二つの影響があると考えております。
①売上減少に関しては、一年目の想定売上高である約⚪︎⚪︎万円の大きな機会損失が発することになります。また、②コストに関しても、昨今の世界情勢の影響で、資材価格が高騰しており、工期が遅れるほどコスト増加に繋がり、投資回収が困難になると考えています。

事前着手申請のタイミング:提出の最適な時期

補助金採択後かつ交付申請前がベスト

事業再構築補助金の事前着手申請のタイミングは重要なポイントであり、これには戦略的な考慮が必要です。補助金の採択が確定した後かつ交付申請を行う前に、事前着手申請を行うことが最適なタイミングであると言えます。

補助金採択後が好ましい理由

事業再構築補助金は採択が確定した後に、経費の配分変更や事業内容の軽微な変更が可能となります。しかし、採択前に事前着手申請を行ってしまうと、採択後に事業内容を変更したい場合に再度事前着手申請を提出しなければなりません。したがって、事前着手申請は採択後に行うことが最も効率的と言えるでしょう。

交付申請前が好ましい理由

事前着手申請の承認を証明する書類を交付申請時に添付する必要があり、事前着手申請を交付申請の途中で行ってしまうと、その時点の交付申請は無効となってしまい、交付決定時期が後ろ倒しになる可能性が高くなります。

また、事前着手申請の承認にはおおよそ10日から最大で約2週間の期間が必要とされています。交付申請の直前で事前着手申請を行ってしまうと、その期間だけ交付申請が遅れる可能性があります。これは、交付決定が遅れるリスクを含んでいます。そのため、交付申請予定日まで約2週間ほどの余裕を持って事前着手申請を行うことが推奨されます。

まとめ:事前着手制度を最大限に活用するために

この記事では、事業再構築補助金の事前着手申請制度を深く掘り下げて解説しました。上記の通り、事前着手申請は、事業を早期に開始したい事業者にとって非常に有益なものですが、要項や申請時にはいくつか気をつけておくべきポイントがあります。

例えば、事前着手申請の承認が採択を約束するものでは無いことや、先んじて使った経費も交付申請で承認されない可能性がある点には注意が必要でしょう。事前着手申請に申請するときは、公募要領や事前着手申請制度関連資料、補助事業の手引きを事前に確認しましょう。

本記事が、事業再構築補助金の事前着手申請を検討している事業者様の一助となることを願っています。

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